短編集 

ウェカマジェ短編まとめ









一日の大半を馬で駆けるのはなかなかに堪える。できることなら柔らかな布団で眠りたいが、人の住めぬような地帯で夜を明かさなければならないこともあるのでその願いは叶わないことの方が多い。 今日も残念ながら野宿だ。くたくたの体で寝床の準備をする。もう辺りは薄暗い。マジェントはソリから積み荷を下ろし、俺はそれを受け取りテントを張っていく。
「ウェカピポさん」
名前を呼ばれて振り返れば荷物を差し出すマジェント。その顔はやはり疲れている。あまり顔色も良くない。少し今日は走りすぎただろうか。 じろじろと見ていたためか、バチリと目が合った。いつも少し眠そうなその目を見ながらなんとなくしたくなった、という理由でキスをした。掠める程度に一瞬だけだが。 マジェントはビックリした様子で目を見開いたがすぐに嬉しそうに笑った。ただの気まぐれにそんな嬉しそうな顔をされても困る。俺のキスにいったいどんな価値があると言うのだろう。

【相互理解について】


日記に投稿した短編。














「あんたが悪い、あんたが優しくしてその気にさせたんだ。だから好きになっちまった。」
人を引き倒しておいてよくもそんなことが言えるものだな、とウェカピポは思う。口には出さなかったが。逆光でぼんやりとしか見えないがウェカピポに跨がるマジェントは大層悲痛な顔をしていた。 肩を掴む力は強いが、あんたが悪いと繰り返すばかりでそれ以上はマジェントは何も出来ないようだった。
「俺のせいにしたければすればいい。だが俺はお前の望んでいるものはやれない。」
今度は思ったままをそのまま口に出した。呪詛のような愛の言葉はぴたりと止んだ。かと思えばどさ、とマジェントが降ってきた。 鼻先を胸元に押し付けられる。男にそういう行動をされるのはいい気分ではなかったが少し言い過ぎた気もするので黙って優しくしてやることにした。昔幼い妹にしたように頭を撫でてやる。
「あんたはほんとにひでぇ。」
また一言だけマジェントから零れた。

【突き放して引き寄せて】

優しくてひどい男なウェカピポさん














「好きだ。」
まるで何でもないことのようにまじめに言うものだから思わず耳を疑った。今聞こえた言葉が間違いでないのなら、それはマジェントにとって凄まじい破壊力を持っていた。
「あ、あんたそ、ういう趣味な、わけ?」
回らない舌でどうにかそれだけ言う。
「わからん、男を好きになったのは初めてだ。」
「じゃあ気のせいかもしれねぇぜ。」
なんとかなかったことにせねば!マジェントは必死だ。マジェントはいたってごくごくノーマルな人間だ。女子と見紛うほどの美少年ならまだしも相手は30も過ぎたおっさんだ。マジェントの理想とはかけ離れすぎている。
「気のせいじゃあない。」
「いや、気のせいだって。」
押し問答を続けるうちにウェカピポが距離を詰めてくる。マジェントは後ずさる。
同じことを繰り返してついにマジェントは逃げ場を失った。両手首を掴まれた。振り払おうとしても力に圧倒的な差があった。壁に縫い止められもう動けない。
「諦めろ。」
嘘だろ!叫びたかったが唇はすでにもう塞がれていた。

【嘘】

エイプリルフールに書いたウェカ→→マジェ
ウェカピポさんをもっと崩壊させたかったけど自重した。














マジェントの生命力の強さには驚くばかりだ。海峡から連れて帰って数日、あれだけの傷を負っておきながら驚異の回復を見せている。医師も驚いていた。ウェカピポは脇腹を大きく負傷していたが、痛み止めさえ飲んでいれば自由に動けたので毎日マジェントの病室を訪れてやっていた。 この国で他に会う知り合いもいなかったし、何よりマジェントが退屈だとごねるからである。一日行かないだけで何故来なかったと問い詰めてくる。
(中略)
「あんたと毎日こうやって喋ってるだけの生活してるといろいろどうでもよくなってきたんだよ。」
包帯から覗く片目だけがへらりと笑った。
「俺が退院したら一緒に住もうぜ。あんたも俺も行き場はないんだ。」
それもいいかもしれない。返事はしなかったがウェカピポはぼんやり思った。

【病室にて】


ウェカピポがもしジャイロたちに協力せずかろうじて生きてるマジェントを発見して連れて帰ったら、というパラレル。
最後まで書けそうにないのでツイッタに投稿したもの。今度こういう話をきちんと書きたいです。














「うわ、あんたそんなの飲んでるのかよ」
ウェカピポのグラスを見るなりそんなことを言ったマジェントは「辛口の酒は嫌いだ」と苦い顔で続けた。自分が何を飲んでようとこいつには関係ない。ウェカピポは無視して手元の酒を煽った。
いつのまにかマジェントは果実酒を引っ張り出してきて勝手に飲んでいる。ウェカピポにしてみればそんな甘ったるい酒を大量に飲むこの男こそ訳がわからない。胸焼けがしそうだ。 じっと見ていると視線に気付いたマジェントがなんだよ、と怪訝そうな顔をした。 いつも青白い頬が少し朱に染まっている。理由はなかったが、返事の代わりに無言で酒で濡れている唇に口付けた。ビックリしたマジェントの肩が跳ね上がる。思わず後ろに引こうとする体を抑えさらに深く口腔を侵すと諦めたかのように力が抜けた。舌を吸うと甘い果実酒の味がする。 しばらく好き勝手してから唇を離すと力なくマジェントが睨んできた。
「あんたの口のなか、まっずい酒の味…」
俺この味苦手なんだって、と言いながら口直しにまた甘い酒を煽る姿を見てさっきの非難はそういう意味だったのか?と改めて思った。 果実酒のパステルカラーが映えるグラスをマジェントから引ったくるとウェカピポは一気にその中身を煽る。
「これならいいか?」
「…もしかしてあんた酔ってる?」
目を丸くしたマジェントにそうかも知れない、と返しながら二度目のキスのためにウェカピポはまた唇を寄せた。

【酔っ払い二人】


これもツイッタから。
仕事終わって二人で飲んでるウェカマジェでした。何の酒、ってのをちゃんと考えてないので曖昧な表現です…。