キスして抱きしめてる時だけは 


*Be careful〜の続きです。
ウェカピポさんが相変わらず偽物。



マシンガントーク






俺がうっかりおかしなことを言ったばかりに相棒とおかしな関係になってはや3日。 ウェカピポは恐ろしいほど今まで通りだった。甘やかしもしなければ、遠ざけもしない。これまでとまったく同じ、今まで通り。 俺はと言えばめっきり静かになってしまった。
あの次の日、足腰が立たなくなるまでやられた俺は動けるはずもなく、もう1日宿で過ごすことになった。 いつものようなテンションで話しかける訳にもいかず、どこにも行けず。密室でウェカピポと2人きり、逃げることも出来ず非常に気まずい1日だった。
そこから引きずり続け、俺が一方的に気まずく感じる日々が続いている。
余談だが正直こんなに体力の差があるとは思わなかった。おっさんに差し掛かってるからって舐めてた。 普段の姿から淡白そうだと決め付けていたのもよくなかった。いつまで経っても解放されず、最後にはうっかり泣いた。 もう許してくれと懇願したあたりで記憶は途切れている。本当に死ぬかと思った。
3日前のことを思い出してゾッとしているとウェカピポが戻ってきた。
「飯を持ってきたぞ。」
なんの感情も感じさせない平坦な低音。あんなことをしておいて何でそんな普通なんだ、あんた。
しかしそれを口に出すとまた何か失言に繋がるような気がしてぐっと飲み込む。 俺だって全くのばかではない。
「……サンキュー。」
ふかふかの布団から離れてテーブルに着いた。布団が柔らかくて暖かいだけでも今日の宿は当たりだ。 ウェカピポと向かい合って座る。テーブルに置かれたシチューは温かそうだ。 腹が減っていたのでウェカピポがいただきますと言う前にがっついた。 例のごとくウェカピポから行儀が悪い、と窘められたが気にせず食べる。 この地域は寒いので温かい食べ物は有り難い。胃袋から温まってゆく感覚が心地よい。
「もう少し落ち着いて食べろ。」
上品にスプーンを口に運ぶウェカピポはやはりいつも通り。 ここまで普通にされると、なんだか3日前のことなんて忘れてもいい気がした。もしかすると気にしてる俺が悪いのかもしれない。 そう思った途端どこかに行っていた俺の本調子が戻ってきた。 3日間話さなかった分いつも以上に口はよく動いた。 ウェカピポは俺の話にただ頷くだけだったり、嫌みを返してみたり、たまに無視をしたり。 でも俺はこの朴念仁に話しかけている時間がとても好きだった。
3日ぶりに楽しい食事を終え、上機嫌で皿を片付けているとウェカピポも食べ終わったのか立ち上がった。
「今日の飯はうまかったなあ、ウェカピポさん。宿にも泊まれて布団は柔らかいし。早くこんな野宿が続く任務なんか終わらせて毎日あったけえ飯が食える日々に戻りたいぜ。あんたもそう思うだろ?」
「マジェント、シチューが付いている。」
「え、どこに」
付いてんだよ、と続けようとしたが続かなかった。目の前の男が唇の端に口付けたからだ。 ペロリと舌が這う感触。 多分俺の細くてクールな目はまんまるになっていたと思う。唇を離したウェカピポは相変わらずの仏頂面だ。 こんな時でも表情のバリエーションに乏しいから何も読み取れない。 俺の口は言葉を発せないまま何文字分もパクパクと動く。
「キスをするとお前は途端に静かになるな。良いことだ。」
なにやら納得して去っていく背中。 今のはどういうことなのか説明してくれ! 顔の熱さに気付かないふりをしながら、目で訴えかける。 未だ俺の喉は言葉を発せないのであった。



なんだか続いてしまいました。
ウェカ→マジェにすると途端にウェカピポさんが偽物になってしまっていけません。
タイトルはポルノの曲から。
歌詞の通り抱きしめてキスしてる時以外はうるさいマジェントとか萌えます。