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 夢 


夢のあいま






暑さと、汗の不快感で目が覚めた。
外はまだうっすら明るくなってきたところ、というところで目を覚ますには早すぎる時間だ。
腹と背中があつい、と思ったら後ろから俺を抱きかかえるようにしてリゾットが寝ていた。首筋にかかる寝息もあつい。
昨日はとても疲れていたので、リゾットを放置して先に寝てしまったので忘れていた。
腹にまわされた腕をゆっくり解くとリゾットが小さく唸った。
起きたかと思ったがまた規則正しい寝息が聞こえ始めたので安心して放っておく。
改めて見るとリゾットも寝苦しそうでなにやら険しい顔をしていた。
プラチナ色の髪も汗でじっとり肌に張り付いている。
この真夏に「仕事だから」と黒いコートを着こなす人間味のない男も熱帯夜は堪えているようだ。
そうっとリゾットを起こさないようキッチンへ向かい、ミネラルウォーターを飲んだ。キンキンに冷えた水が喉を通る感触が心地よい。
喉も潤い、ふうと息を吐いた瞬間、音もなく後ろから手が伸びてきた。
「うわっ。」
「俺にもくれないか……。」
寝起きの掠れたリゾットの声。振り返れば何とも眠そうな、目が半分も開いていないリゾット。
寝間着代わりのシャツは汗でびしょびしょだった。
リゾットは眠そうな顔のまま、びっくりして固まっている俺の手からペットボトルをするっと奪ってミネラルウォーターを飲み干す。
「起きたなら気配消すなよ…。びっくりしただろうが…。」
「職業病だ、仕方ないだろう。」
ぼそぼそと覇気のない声でリゾットが返す。こんなふにゃふにゃしたリーダーはあまり見れるものではないので面白い。
「つーか、起こしたか?」
「いや、暑さで目が覚めた。プロシュートがいなかったから水を飲むついでにプロシュートを探そうと思って…」
「俺がついでかよ。」
小突いてやると、リゾットはううん…と何とも鈍い曖昧な反応を返した。これは寝ぼけている。頬を摘んでやると嫌そうな顔をする。
「何がしたい。」
「別に。面白えから。」
そういうとますますリゾットの顔が嫌そうに引きつった。本当に眠いのか今日は表情がよく変わる。いつもは貼り付けたような無表情ばかりなのに。
「早く寝直すぞ。」
グイッと引っ張られ体が宙に浮いた。肩に担がれたのだ。ずんずんと、大きい歩幅で寝室へ連れて行かれる。
「寝直すのかよ。」
「ああ、眠い。」
布越しに感じるリゾットの手は熱い。眠いと体温が上がるなんて子供か。
我が家は狭いのですぐに寝室に到着した。 ポイッとベッドに放り投げられる。
柔らかい布団に衝撃を吸収され、俺はまったく痛くなかったが、代わりに盛大にスプリングが悲鳴を上げた。
リゾットがベッドに上がればスプリングはさらに軋む。
こんな体格の男2人を乗せて、このベッドも不憫なものだ。潰れなきゃいいが。
真横に寝転がったリゾットは後ろから俺を抱える。
「……暑い。」
「俺はこっちの方がいいんだ。」
先ほどよりさらに眠そうな声が飛んできた。
「お前なあ……。」
そんなことを言われても暑いものは暑い。
リゾットの触れているところから汗が噴き出してくる。
ごそごそとリゾットの方に向き直るとすでにリゾットの瞼は閉じていた。
報復を恐れ、常に気を張っていなければいけない暗殺者にあるまじき無防備な表情に、振り解いてやるつもりだった腕が振り解けない。
「くそっ」
小さく悪態を吐いてから軽く唇にキスを落として俺も眠ることにした。
外は少し明るくなったがまだまだ街は眠っている。




最近寝苦しくて仕方ないので。
眠くて兄貴に甘え気味なリーダーが書きたかったのです。